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遺伝研のさくら

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さくらの季節になってきました。早咲きの河津桜などは美しいい花を咲かせ、すでに満開の時期を過ぎてしまいました。やがて染井吉野も開花を始める季節になります。このたび、『生物の科学 遺伝』という雑誌でサクラに関する特集「サクラ研究の新展開」を担当しました。大きな書店ではすでに販売されているでしょう。 遺伝研構内の河津桜(2019年2月) 私の研究をご存知の方は「ネズミの研究者がサクラの特集??」と不思議に思われるかもしれません。私も不思議です。これには深い理由があるのです。 遺伝研はたくさんのサクラの品種を有することで有名な研究所です。なんと約220種類、約500本の桜の木が構内にあります。これだけたくさんのサクラがあるのはなぜでしょう。 1949年の遺伝研設立後に、遺伝研構内に国内の有名なサクラの木が集められて植えられるようになりました。1952年に46種類、1960年代にはすでに200種類以上集められていたそうです。このようなサクラの収集に大きな貢献をされたのが染井吉野がエドヒガンとオオシマザクラの雑種であるということを発見された竹中要(たけなか よう)先生です。しかし、1966年に竹中先生が逝去されると、誰も研究に使うことがなくなってしまいまい、それから数十年もたつとサクラの維持や管理も難しい状況になってきたのです。 そこで、2015年に「 遺伝研さくらの会 」というボランティアグループを立ち上げて所内のサクラの維持や管理に貢献することになりました。その会のお世話を立ち上げの時からしている関係で、今回サクラに関する特集の担当をしてもらえないかというお話をいただいたのです。会のお世話をしているとは言っても私はサクラの専門家でもありませんし、それほど詳しくなったわけでもありません。特集の担当はさすがに荷が重いかなとは思いましたが、多くの方のご協力を頂き、今回なんとか無事に特集を出すことができました。今となっては、この特集を組むことをきっかけに、遺伝研のさくらの歴史を改めて知ることができましたし、その価値も再認識することができました。結果としてお引き受けしてよかったと思っています。 これから桜の季節になります。ぜひ「生物の科学 遺伝」を手に取ってサクラを楽しんでください。