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オオジシギの理由なき反抗

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繁殖期になると動物たちはより華やかになります。 婚姻色という言葉があるように、動物たちは鮮やかな色彩に変化します。庭にある睡蓮鉢の中のメダカでさえも産卵する5月になると色彩が鮮やかになります。鳥はよりわかりやすいでしょう。 キジのオスは繁殖期の春には顔の赤い色がより分かりやすくなります。広い農地に行くと田畑でケーン ケーンという鳴き声がよく聞こえます。あちらでもこちらでも鳴いているので、それぞれ縄張りを主張しているようです。時におそらく縄張りに侵入した他のオスがいるのでしょう。オス同士が向かい合って飛びはねながら争っている姿も見ることができます。ひらりと飛び上がっては相手に攻撃を仕掛ける姿は激しいものの優雅でもあります。さすがは国鳥に指定された鳥です。 先日の5月中旬に、富士山でオオジシギを見ました。朝の6時半ころに須山の近くに行きました。日が昇るのが早くなってきているのでその時刻にはすでに太陽も高くなっています。草原の向こうから普通では鳥と思えないような、カエルのような鳴き声が聞こえてきます。少し待っていると、鳥が飛び立ちました。富士山を背景にして空を大きく回って視界から消えていきます。やがて、「ツビーク ツビーク」という声が聞こえて戻ってきました。再び視界に現れたオオジシギは上空から「ゴゴゴゴッ」という音を響かせながら急降下をします。地面の手前で角度を変えて少し離れた場所に着地します。今度は別の個体が同じように飛び立ちます。 ディスプレイフライトの後のオオジシギ これはディスプレイフライトと呼ばれる行動です。はるかオーストラリアからわたってきたこのオオジシギたちは、繁殖のためにこのフライトをすると言われています。メスに見せて気をひくのでしょうが、別のオスに対して「どうだっ!」という意味もあるのかもしれません。 このディスプレイフライトを見ながら、昔見た「理由なき反抗」という映画を思い出しました。親に反抗を繰り返す主人公のジェームス ディーンが扮する少年ジムが不良相手にチキンレースをするのです。何かに怒りをかかえた若者二人がお互い争い、それぞれ盗んだ車で崖にノーブレーキで向かっていきます。どちらが先に怖くなりブレーキをかけるか争うのです。ナタリーウッドが扮する少女が見守る中、競争をした2台の車は共に崖から落ちていきますが、ジムは崖の手前で車から飛び降り命が助かりま

サギたちも自己家畜化?

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私が研究している家畜化はとても興味深い現象です。 動物が自然界で生存していく上で家畜化は不要なものだと思われるでしょう。実際、家畜化されたニワトリやウサギなどの動物が人里離れた野に放たれれば早い段階で捕食者の餌食になるに違いありません。したがって、家畜化と自然界での生存競争とは対極にあると考えられがちです。 しかし、本当にそうでしょうか?家畜化とは動物が同一種ではない人などの他種に生存するための餌や住みかなどを委ねることです。そのために、家畜化が進んだ動物たちは人などの他種の動物に高い社会性を示すようになります。人と犬の関係が良い例です。犬たちは人と同じグループの一員であるように生活をするようになります。この他種の動物に対する社会性の向上が家畜化の重要な要素となるのです。 一方、家畜を支配しているはずの人も行動がおかしくなってきています。多くの人はイヌやネコを自宅で飼っていますが、まるで家族と同様、いや家族以上の関係で飼っている人が多くいます。ペットを家族のように名前で呼び、まるで自分の子供に対するように話しかけ、多くの時間をペットと共に過ごし、「ペットに癒される」などと言っています。ペットが死んでしまうとペットロスでつらい日々が続きます。(これは私も経験があるのであまり言えません。)実は人も他種の動物に対して高い社会性を示すようになっているのです。 人は自己家畜化されることで高い社会性を身に着けたといわれています。それにより、他者に対する共感ができるようになり、他人を助けることもできるように進化してきたのです。 先日、サギが群れて巣を作っている木を見つけました。 サギの群れる木 よく見ると、その木にはゴイサギ、アオサギ、ダイサギ、コサギなどが群れて巣をつくっています。別種であるにも関わらず、巣が近すぎます。しかも、様々な鳴き声が混じってずいぶん賑やかです。巣作りと育雛という、種の維持に不可欠なイベントを過ごすにしては他種に対して親和性が高すぎます。このような他種への高い親和性は家畜化のサインでもあります。もしかするとサギたちも自己家畜化が進んだ鳥なのかもしれません。そういえば、農家の人がトラクターで田畑を耕す際に平気で人の近くにいる姿も見たことがあります。「サギの群れる木」を見てなんだか楽しくなってきたのでした。