サギたちも自己家畜化?

私が研究している家畜化はとても興味深い現象です。

動物が自然界で生存していく上で家畜化は不要なものだと思われるでしょう。実際、家畜化されたニワトリやウサギなどの動物が人里離れた野に放たれれば早い段階で捕食者の餌食になるに違いありません。したがって、家畜化と自然界での生存競争とは対極にあると考えられがちです。

しかし、本当にそうでしょうか?家畜化とは動物が同一種ではない人などの他種に生存するための餌や住みかなどを委ねることです。そのために、家畜化が進んだ動物たちは人などの他種の動物に高い社会性を示すようになります。人と犬の関係が良い例です。犬たちは人と同じグループの一員であるように生活をするようになります。この他種の動物に対する社会性の向上が家畜化の重要な要素となるのです。

一方、家畜を支配しているはずの人も行動がおかしくなってきています。多くの人はイヌやネコを自宅で飼っていますが、まるで家族と同様、いや家族以上の関係で飼っている人が多くいます。ペットを家族のように名前で呼び、まるで自分の子供に対するように話しかけ、多くの時間をペットと共に過ごし、「ペットに癒される」などと言っています。ペットが死んでしまうとペットロスでつらい日々が続きます。(これは私も経験があるのであまり言えません。)実は人も他種の動物に対して高い社会性を示すようになっているのです。

人は自己家畜化されることで高い社会性を身に着けたといわれています。それにより、他者に対する共感ができるようになり、他人を助けることもできるように進化してきたのです。

先日、サギが群れて巣を作っている木を見つけました。

サギの群れる木

よく見ると、その木にはゴイサギ、アオサギ、ダイサギ、コサギなどが群れて巣をつくっています。別種であるにも関わらず、巣が近すぎます。しかも、様々な鳴き声が混じってずいぶん賑やかです。巣作りと育雛という、種の維持に不可欠なイベントを過ごすにしては他種に対して親和性が高すぎます。このような他種への高い親和性は家畜化のサインでもあります。もしかするとサギたちも自己家畜化が進んだ鳥なのかもしれません。そういえば、農家の人がトラクターで田畑を耕す際に平気で人の近くにいる姿も見たことがあります。「サギの群れる木」を見てなんだか楽しくなってきたのでした。





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