甘味嗜好性

私たちが研究しているマウスにも甘味に対する嗜好性に系統差があることが知られています。スクロースに対する嗜好性を調べると、B6という系統はこの甘味を好みますが、129という系統ではあまり嗜好性を示しません。このような嗜好性の違いは系統の遺伝的違いを反映しているために、遺伝的要因が嗜好性に関与していると考えられています。実際、甘味嗜好性に関する遺伝子をマッピングするとマウスの第4番染色体上に複数の遺伝子が存在することが報告されています。

しかし、人の場合はどうでしょうか?国により食べ物の好みに違いがあるのは遺伝子が原因というよりも食文化が多分に影響している気もします。つまり、嗜好を変えようと思えば変えることも可能ではないかと思うのです。

ここのところ忙しい日々が続いていました。4月にはフランスのパリで超音波コミュニケーションの研究をしている研究者が勢ぞろいしてさまざまなディスカッションを行いました。その会議の内容はここでは触れないのですが、さすがにパリ、食事は楽しむことができました。高級な料理は口にする機会はありませんでしたが、何気なく口にするもの、たとえばホテルの朝食に出てくるパンとコーヒーそれにジャムとヨーグルト、質素な朝食ですが、私にとってはパンの硬さや味にも十分満足でした。それにカフェやカジュアルなレストランで食べるちょっとした食事もそれなりにおいしいと感じました。

5月には米国のコロラド州ボルダーで行動遺伝学に関する学会があり参加してきました。ボルダーは元マラソン選手の高橋尚子さんをはじめ多くのスポーツ選手が高地トレーニングをする場所としても有名です。近くには切り立った岩山で有名なフラットアイアンマウンテンなどもあり、風景もきれいです。

フラットアイアンマウンテンへのハイキングコース

でも、食事はどうしたものでしょう。朝食に出てくるパンはすべて甘く、まるで菓子パンのようです。ヨーグルトにはlightと書いてあるにも関わらず、成分表を見ると一つのパッケージあたり20グラム以上の砂糖が入っています。いろいろなところで口にするものがあまりにも甘く、数日たつとさすがに薄味に慣れている身にとっては身体への負担も重く、食傷気味になってきます。結局、スーパーで比較的味の薄そうなパンを買ったりフルーツを買って食べるのが最もおいしく感じる始末でした。米国の人は多くの人がこのように甘いものを食べているのでしょうか?

最近驚きのニュースがありました。ニューヨークで、肥満防止のために映画館やレストランなどでは特大サイズのソフトドリンクの販売を禁止するというものです。少し異様な規制のように思えますが、米国では500mlを超えるドリンクが一般的なことを考えると、むしろそのようなサイズのソフトドリンクが当たり前に売られている方が驚きでもあります。帰国の際に空港でファーストフードを食べましたが、その際注文して出されたソフトドリンクはあまりにも大きくてすべて飲むことはできませんでした。また、米国では、スーパーなどでソフトドリンクや食べ物を買おうとしてもパッケージがいずれも大きく困ることもよくあります。どう見ても一人で食べたり飲んだりすることを考慮していないように思います。

もう少し甘さ控えめで量も程よく少なめにしてはどうかと感じてしまうのですが、これは余計なお世話なのでしょうか?

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