おめでたい亀を飼うということ

ついに2013年になりました。「ついに」といっても2013年が私にとって特別な年ではないので、ただ単に新しい年が明けたという意味での「ついに」です。新年にあたって身の周りに動物に関する何かおめでたいことを象徴するものはないかと思って見渡してもこれといって思い浮かばなかったのですが、一つ見つけました。自宅で飼育している亀です。

このカメはミドリガメ(正しくはミシシッピーアカミミガメ)ですが、すでに8年ほど生きていて随分大きくなりました。いろいろと調べてみると、このミドリガメは30年から40年ほど生きることもあるということなので、まだまだ若い部類に入るのでしょう。「鶴は千年、亀は万年」と中国の言い伝えにあるように、亀は長寿の象徴として親しまれています。「万年」生きると例えられるなんて、やはりおめでたい動物といえます。

カメ子 2013年正月
このめでたい亀ですが、飼育してみてはじめて考えてみたこともあります。

まだ子供が小さかった頃に、ホームセンターのペットコーナーで販売されていたものを子供が欲しがったのであまり深く考えることなく購入しました。小さいにも関わらず元気よく動くさまはぜんまい仕掛けのおもちゃのようでとてもかわいく感じました。2匹購入したものの、1匹はまもなく不幸にも水槽の中の岩の間に挟まりしばらく浮上できなかったようで、気づいた時にはおぼれていて弱った体を回復できず死んでしまいました。それでも他方は順調に成長を続けました。しかし、カメ子と名付けられたそのミドリガメの成長と反比例するように子供の興味も薄れていきました。こどもから「絶対に世話をするから」とせがまれてペットを購入し、やがて世話をしなくなるのは珍しいことではありません。おそらくどの家庭でも似たような経験はあるでしょう。そして世話係は私自身になり、水槽やカメ子の甲羅をたわしでこすり掃除をして水を替えるのは週末の私の仕事となりました。

一年目の冬を家の中で無事に過ごしたカメ子は2年目の春から秋にかけてさらに大きくなりました。2回目の冬は屋外で過ごさせることにしました。この三島は比較的温暖なので野生化したものと同様にミドリガメも冬を越せると思ったのです。季節も秋の11月になってくると朝夕寒い日があり、極端にカメ子の食欲がおちてゆきます。人が近づくと餌をもらえると思い盛んに動き回るのですが、餌をやってもほとんど食べることができなくなるのです。やがて11月中旬には全く餌を食べなくなります。

そうするとあとは餌を食べないまま春まで過ごすのです。日本にもともと生息するクサガメやイシガメは冬になると土の中で冬眠しますが、ミドリガメは水の中で冬眠することなく過ごすのです。冬の間も天気のいい日は水から上がり甲羅干しをしますし、人が近づくとやはり反応してゆっくりですが動きます。そのようにして低燃費状態を保ちながら冬を過ごし、春になり餌を食べ始めるのは4月の晩春になってからです。気温も水温も上がって冬の気候がぶり返す心配がなくなり、体の状態も十分に餌を消化するのに備えができてからようやく食べることができるようになるようで、いきなり餌がたくさん食べられるわけではないのです。つまり、屋外で冬を越すミドリガメは11月から4月初めまでのおよそ5か月間も餌を食べずに過ごすことになります。なんとエネルギー効率の良い動物なのでしょう。あとは毎年このような越冬の繰り返しです。

ミドリガメはこのように優れた能力を持つ動物ですが、困った面も多々あります。思ったよりも成長が早く、最初に購入したときの水槽ではあっという間に飼育できなくなります。そのため、もっと大きな水槽がすぐに必要になります。また、大きくなったミドリガメは結構凶暴で、一度指を咬まれた際にはなかなか放してくれず危うくけがをしそうになったほどです。そのような経験から考えると、生後3年目以降になったミドリガメはもはや一般の人のペットには不向きではないかと感じています。

カメ子を見つめる野良猫

実際、国内のいろいろなところで違法に投棄されたミドリガメが繁殖し生態系を破壊しているということで大きな問題になっています。全国の神社などの池にも捨てていく人が後を絶たずミドリガメだらけになったりしているところもあるようで、ずいぶん罰当たりなことをするものだとその神経にもあきれるものですが、やはりこれも大きな問題です。こういう問題も考えると、ミドリガメを購入する際には大きくなった際にも飼育できることを前提として飼い始めることをもっと理解する必要があるのではないかと思うのです。これからもしミドリガメを飼うことを子供からせがまれた場合には、ぜひ近くの神社に行って池で日向ぼっこをしているミドリガメを見た上で、それを自宅で飼育可能かどうかを判断してから購入することをお勧めします。

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