大英博物館の入場料はいくら?

先日、NHKスペシャルの「2時間で回る大英博物館」という番組を見ました。大英博物館といえば、入るとあっさりと見ても半日はつぶれるほどの規模なので、そこを「2時間で回る」といううたい文句に惹かれました。番組は、映像が案内をする人の目線になっていて、その案内人が歩きながら紹介するようになっています。

番組は、大英博物館に入るところから始まりました。留学中など何度か行ったことがあるので、懐かしい映像です。案内人は歩きながらエントランスに入っていきます。
「入場料はどこかな?」などとつぶやいていたと思います。

やがて入り口に立っていた職員と以下のような会話をしました。
「入場料はどこで払うんですか?」
「入場料は無料ですよ。ただし、寄付をしていただけるんだったらうれしいですけどね」
「えっ? 無料なんですか? すごいなあ。こんな博物館が無料だなんて・・・」
おおよそこのような会話とも独り言ともつかない言葉を発しながら、案内人はその職員の横をそのまますり抜けて入っていきました。

この様子を見ながら「あっ NHKがやっちゃったなあ」と、見ていたこちらが恥ずかしくなってしまいました。

イギリスでは、大英博物館(British Museum)やロンドン自然史博物館(Natural History Museum)など入場料が無料の博物館がいくつかあります。こうした博物館が無料なのは、経済的に非常に苦しい人も差別なく入場できるようにするためだと聞いたことがあります。その一方で、入り口には寄付についてのお願いがはっきりと書いてあります。随分前の記憶になりますが、自然史博物館の場合は、おおよそ以下のような内容だったと思います。

(この博物館は、皆さんからの寄付により運営されています。入場の際にはぜひご寄付をお願いいたします。おおよそ5ポンド程度が妥当な値段だと思います)

もしかすると5ポンドという値段は私の記憶に間違いがあるかもしれませんが、いずれにしても近い値段だと思います。こうした文章を見ると、無料だと思うでしょうか?私には、この文章の横を何も支払わないですり抜ける勇気はありません。実際、私がこうした博物館に入った際には、入場する他の多くの人たちが寄付をしていたように思います。イギリスでは寄付によりこうした学問の基盤を支える文化があるので、人々もあたりまえに寄付をするのだと感じていました。

つまり、こうした博物館は入場料無料とうたいながら、実はそれは入場料を払えない人に対する配慮で、普通の人は入場する際にそれ相応の寄付をすることが求められているのです。

先の番組映像の中で入り口の職員が口にした言葉では「寄付をしていただけるんだったらうれしいですけどね」というのが実は本心なのです。

日本の多くの旅行ガイドブックなどでも、こうした博物館の項目に入場料無料とだけ記載してありますが、寄付をするようにとは書いていません。そのため、留学中に日本の人と入場料の話題になった際に、その感覚の違いに少し違和感を感じたことも何度かありました。はたして旅行者の多くはそれなりに寄付をしてくれているでしょうか?そしてツアーの場合も、旅行添乗員の人はそのようなアドバイスを旅行者にしてくれているでしょうか?日本からこのような博物館を訪れる旅行者も、このような文化に気づいてくれるといいなあと思うのです。

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