行動遺伝学に関する入門書を出版しました

長かった2011年もようやく師走を迎えようとする頃に、「行動遺伝学入門」という本を裳華房より出版して頂きました。これは、私が山元大輔先生と一緒に編集したものですが、各章を執筆して頂いた先生方に感謝しなければならないと思っています。もちろん出版社の方にも本当に感謝しています。


行動遺伝学入門 「動物とヒトの”こころ”の科学」 裳華房
 これまでずっと、大学生の人たちが行動遺伝学に関して学ぶのに良い参考書が必要だと思い続けてきました。この研究分野は、幸い多くの人に興味を持ってもらうのですが、では何が行動遺伝学かというと、それを把握するための日本語の書籍がこれまであまりなかったのです。この研究分野はアメリカやヨーロッパでは非常に盛んで、アメリカで開催される行動遺伝学に関する国際学会などに出ると参加している研究者の数もずいぶん多くなり、活気もあります。そのためか優れたテキストブックもいくつか出ています。一方、日本ではまだ行動遺伝学に関わる研究者の数が少ないように感じています。その原因とまでは言いませんが、良いテキストブックが無かったこともいくらか影響しているように思います。

行動遺伝学と一口に言っても、その中では、研究者によって対象動物もさまざまで、実験手法はもちろん、研究で知りたいことまでさまざまです。ですから、この分野を総括して一つの書物にするのは本当に難しい作業です。日本語の書籍があまりなかったもう一つの理由はここにあるのかもしれません。そういう理由で、今回の書籍では、執筆して頂いた先生方に、それぞれの研究分野をご自身の視点からまとめて頂くようにさせて頂きました。そういう意味で、この書籍は各執筆者の方々の成果なのです。

この書籍の出発点は、エヌ・ティー・エス社の「生物の科学 遺伝」で2010年に出させていただいた特集「動物行動の遺伝的基盤を解き明かす」にあります。そういうご縁か、この雑誌の2012年の1月号には森脇和郎先生になんと見開き2ページにわたる詳細な書評を書いていただきました。ここでは詳細は触れませんが、本当に的確なご指摘がたくさんあり、頭の下がる思いでした。その冒頭で言われているように、この書籍は行動遺伝学の分野のモノグラフとしてまとめてあるものなのです。

まだ研究分野になじみの無い人が最初にその分野の全体像を知る上では、このようなスタイルはありがたいものだと思います。私が昔(25年前)東横線自由が丘の近くに住んでいたころ、おいしいケーキを食べることができる店を知っているのは、それほど街中を歩き回ることもない身にとってはかなりの上級の知識に思えました。それが今は自由が丘スウィーツフォレストがあります。そこへ行けばかなりのものを見ることも食べることもできます。しかもそれぞれの店はとても優れたスウィーツを出しています。まるでそのようにこの本を楽しんでもらえることを願っています。


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