巳年に思う

今年は巳年です。ヘビは子供のころから頻繁に目にしてきましたが、今でも突然見ると全身に緊張が走り、一瞬息もとまります。身体がフリーズするのです。それから少したつと、今度は心臓が再びどくどくと高鳴り前よりももっと血液を全身に送ろうとしているのを感じます。いつでも逃げだせるようにからだが準備をするのでしょうか?随分前のことになりますが、以前マウスを飼育していた古い施設の奥には薄暗く使われていない部屋がありました。週末に一人で飼育施設に入り、使われていない部屋に通じる廊下のドアを開けて中をのぞいた後でまたドアを閉めようとしたのですが完全に閉まりません。どうしたのだろうと思ってもう一度ドアを開けると肩にヘビが落ちてきたことがありました。薄暗い廊下でです。これがどれだけ恐ろしいか想像ができるでしょうか?

このように多くの人が怖がるヘビですが、かれらは別に大して悪いことをしているわけでもありません。また日本の住宅街で毒蛇のマムシに出会うことはほとんどありませんし、通常目にするのはアオダイショウやシマヘビです。これらのへびはそれほど恐れることもないのですが、なぜ人はヘビを怖がるのでしょうか?もともと人は生まれながらにしてヘビを怖がるという報告もあるそうですが、長い人類の進化の過程でヘビを怖がらざるをえないような経験を繰り返してきたのかもしれません。とても不思議な現象です。

毒蛇はさておき、日本で通常目にするヘビを怖く感じるのはその餌を食べている様子です。餌を丸呑みにする姿は普通のときには無いすごさがあります。でも案外ヘビがそのような餌を丸呑みにする姿をみる機会には出会わないものです。私の自宅の2階の窓には庭の大きなハナミズキの木がまじかに迫っていますが、何年か前にそのハナミズキの中にキジバトが巣を作ったことがあります。春に産卵をして親が抱卵し、やがてひなが生まれて、そのような日に日にひなが育っていく様子を見るのを毎朝楽しみにしていました。ある朝のことです。ひときわ親鳥が騒いでいるのに気がつきました。窓からハナミズキの中の巣をのぞいてみるとそこには大きなアオダイショウがいて、親鳥が少し離れたところから心配そうな声を出しています。アオダイショウの頭の下は大きくふくれてそこにひながはいっているのは一目瞭然です。やがてアオダイショウは枝をこちらに向かって移動してきました。舌を出しながらこちらに近づいてきてどうも私の気配を感じているようです。窓からは1メートルほどのところまで来ましたが、それ以上は枝が伸びていないためやがて方向転換をしてハナミズキの木を降りていきました。まるで私に眼を飛ばして「何か文句ある?」とでも言って立ち去っていったようで、なかなかの風格でした。やはりヘビは恐るべき存在です。

親鳥はしばらく近くにいましたが、やがて巣を捨ててふたたび戻ってくることはなかったのです。日常の中に弱肉強食の一端を垣間見たのでした。

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