目的地に向かって泳ぐ

先日連絡があり知ったのですが、このブログをフランスにいる友人が読んでくれているそうです。うれしい限りです。ただ、難(むつか)しい漢字にはフリガナをつけてくれと要望がきました。場合によってはフリガナをつけますが日本人の人には少しわずらわしいかもしれません。その点ご容赦(ようしゃ)ください。

マウスを用いて学習や記憶(きおく)について調べる行動テストがあります。そもそもマウスがものを覚えるか学習するかということを調べるのは非常に難しいのですが、そういう中で考え出されたテストの一つにモーリス水迷路(みずめいろ)というテストがあります。もともとR.G.M. Morrisという人がラットで空間記憶学習を調べるテストとして考え出したもので、今ではマウスでも学習記憶のテストとして広く用いられています。ただ、私たちのグループではまだこのモーリス水迷路を行ったことはありません。これまでそのテストをする機会がなかったのが理由だと思います。

このテストでは円形のプールに白濁(はくだく)した水を入れます。その水面下にマウスからは見えないようにプラットフォームを一か所に沈めます。プールに入れられたマウスは逃げ場を求めてプールの中を泳ぎます。マウスはでたらめに泳ぎますが、やがて運よく水面下のプラットフォームに足が触れると、その上に足をつきようやく休むことができます。そのあと実験者によって水から出されてケージに戻してもらえます。もちろん制限時間も決めてあり、探索(たんさく)に長くかかりすぎるとマウスは人の手で救い出されます。次の日に同じプールに入れられたマウスは、また泳ぎはじめますが、あちこち泳ぎながらも昨日プラットフォームがあった場所にたどりつくとまた休むことができます。こうして、やがて空間の目じるしをたよりにプラットフォームをめざして泳げば早く休めることを理解するようになります。正常なマウスであれば、日に日にプラットフォームへたどりつくまでの時間が短くなり、またそこへ到達(とうたつ)するまでの軌跡(きせき)も単純になっていきます。このようにして空間学習と記憶の能力を調べることができるのです。

私はあまり肩こりというものを経験したことがなかったのですが、ここ数年は特に冬の寒い時期にひどい肩こりに悩まされています。まるで首の周りの筋肉が固まったようになり、ひどい痛みがあるのです。これはなってみるとなかなか苦しいものです。これまで肩こりの話は他人事として聞いていたのですが、今では切実(せつじつ)によくわかります。苦慮(くりょ)したあげく、バランスの良い運動をするのがよいのではないかと思うようになりました。それで先週と今週は週末にプールに行って泳いできました。プールでは特定の筋肉に強い負荷(ふか)がかからないのと、腕を肩から大きく繰り返し動かすので肩こりには良いのでは?と考えたのです。

私は水泳は決して苦手ではなく、平泳ぎであればおそらくかなり長い時間泳ぎ続けることができます。また海に素潜り(すもぐり)で潜るのも得意です。でも、クロールはどうも泳ぎ方がよくわかりません。これは小学生のころから変わらず、高校などでもクロールでは早く泳ぐことができませんでした。何よりこのクロールで長く泳ぎ続けることができないのです。

今日も25メートルのプールで泳ぎました。コースロープで区切られた中級者用のコースには「途中で足をつかないでください」と書いてあります。心してスタートするのですが、クロールで25メートルを泳ぎ切るころにはそろそろ足をつきたくなります。どうも腕の使い方かあるいは体のバランスのどこかがおかしい気がします。おそらくあまり真面目(まじめ)にクロールの練習をこれまでやったことがないのがいけないのでしょうが、昔から25メートルや50メートルを泳ぎきったあたりで感じる限界感が今でもまだ続いていることを改めて感じました。

私自身、途中で足をついてはいけない状況でなんとかゴールを目指して泳ごうとするあの辛さがよくわかります。もしかすると自分がクロールをする際に感じるあの辛さを知っていることが、モーリス水迷路を今までやったことがない無意識のそして本当の理由なのかもしれません。

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